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平成28年8月1日、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。国の責任によってB型肝炎ウイルスに感染した場合に給付金を請求できる期限が5年延長され(令和4年(2022年)1月12日まで)、多くの方に救済の道が開けたといえるでしょう。しかし、ここに至るまでには、B型肝炎訴訟の原告・弁護団が何十年もの間、国とたたかい続けてきた歴史があります。
この記事では、B型肝炎訴訟の起点や経緯、原告・弁護団が勝ち取った基本合意書の内容を解説します。
B型肝炎訴訟の歴史は、昭和23年6月の予防接種法制定にさかのぼります。戦後間もない日本では、感染症の流行がもたらす社会的損失の回避が求められており、その対策として罰則付きで予防接種が義務づけられることになります。
しかし、国は注射器の使いまわしによる危険性を認識していながら、針や筒の消毒、交換に関する指導を徹底していませんでした。
国が注射器の連続使用の中止を指導したのは昭和63年1月27日のことです。この約40年の間に感染した可能性のある方は、厚生労働省の推計では約40万人以上にのぼるとされています。
感染された方々は肉体的、精神的な苦痛だけでなく不当な偏見・差別によっても苦しめられてきましたが、国は何の救済も行ってきませんでした。こうした状況を受け、平成元年に5名の方が国を提訴し、平成18年1月に最高裁判所が国の敗訴を確定します。これを皮切りに平成20年3月以降には全国各地で一斉に集団訴訟が起こりました。
平成22年5月には、国と原告・弁護団との間で和解協議が始まり、平成23年6月には両者の間で「基本合意書」が成立し、認定要件や金額などが取り決められました。
平成24年1月には全体の解決を図るために「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(特措法)が施行され、「基本合意書」に基づき和解した方(一次感染者からの母子感染者や相続人を含む)に給付金が支給されることになったのです。
その後、平成27年3月には20年の除斥期間が経過した死亡、肝がん、肝硬変の患者との和解に関する「基本合意書(その2)」が締結、さらに平成28年8月には特措法の一部改正が行われ、請求期限が令和4年1月12日までに延長されました。
さらに、令和3年6月11日、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律が国会で成立し、新たに請求期間を2027年3月31日まで延長する内容となっています。
年月 | |
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昭和23年6月 | 予防接種法制定 |
昭和63年1月 | 国が注射器の連続使用の中止を指導する |
平成元年 | 5名のB型肝炎患者が被害救済を求めて提訴(札幌地裁) |
平成18年1月 | 国の敗訴が確定(最高裁) |
平成20年3月以降 | 全国700名以上の方々が集団訴訟を提起 |
平成22年5月 | 国と原告・弁護団との間で和解協議が始まる |
平成23年6月 | 「基本合意書」が成立 |
平成24年1月 | 「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」施行 |
平成27年3月 | 「基本合意書(その2)」が成立 |
平成28年8月 | 「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」成立 |
令和3年6月 | 「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律」成立 |
基本合意書の内容は次のとおりです。
国は、集団予防接種の際に注射器を連続使用したことによってB型肝炎ウイルス被害を生じさせた責任を認め、被害者とその遺族に謝罪しました。基本合意書への調印後、菅首相(当時)が被害者への謝罪の言葉を述べたことは大きく報道されました。
給付金の支給対象となる方の認定要件、請求手続きに必要な資料、病態に応じた給付の金額が決められました。
平成23年1月12日以降に提訴された同種の訴訟について、基本合意書で定められた内容に基づき同様の和解を行うこととされました。
国は、B型肝炎を含む肝炎患者が偏見・差別を受けることのないように啓発・広報活動に努め、また肝炎ウイルス検査の一層の推進、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進、医療費助成など必要な施策を講ずるよう、引き続き努めることとしました。
国は、集団予防接種における注射器の連続使用によるB型肝炎ウイルス感染被害の実態や経緯の真相究明および検証を第三者機関において行うこと、また再発防止策の実施に最善の努力を行うことを約束しました。
上記④⑤の施策の検討にあたり、原告の意見が肝炎対策推進協議会などに適切に付されるよう、原告・弁護団と協議・調整する場を設定することにしました。